憑神 ‐ 浅田次郎|映画(出演)江口洋介, 妻夫木聡

新刊「憑神」を読んだ。
久しぶりに浅川小説を読んだ感想は?
本の主人公、別所彦四郎が三巡稲荷の祠に手を合わせたことから「貧乏神」「疫病神」「死神」の災難に合いながら神の協力を得て出世をしていく話である。
読みはじめは、浅田の辻褄の合わない落語話しに付き合っているような気がしていたが「死神」が現れた辺りから浅田の世界に引き込まれた。
貧乏神は日々のやりくりで慣れているが、厄病神は一番嫌やだ。
何をしても上手くいかない時に「厄病神にでも憑かれたんやろうか?」とふさぐ時がある。
その厄病神を本の中のでは一番愛すべき神に書いているところが浅川ワールドである。
架空の関取の姿で時には姿を現して、彦四郎と話をする。
たまには彦四郎の仕事も手伝う。大きななりで、涙もろく人情味があり厄病神らしからぬ。
鉄道員の本でも狐につまれた思いは経験済みであるが、浅川の神や仏は神秘ではなく体温を感じる。
貧乏神に教えてもらった宿替えで貧乏神と疫病神には祟る相手を変えてもらって難を逃れたが、死神だけは自分で引き受けなければ後生が悪い。
彦四郎の死場所捜しが本編の主題になっていく。
江戸から明治に変わる時代に実直に生きた武士の話である。
既存の価値観が崩壊する様は現在に通じるところもある。

映画版DVDもあります(出演)江口洋介, 妻夫木聡, 夏木マリ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

コメント

  1. はじめまして TBさせてもらいました。
    やはり浅川ワールドですね。 彼の本はいつも楽しく読んでます。
    読んだ人が「読みたくなる」いい感想文ですね。ブログも楽しく見せていただきました。

    • skog
    • 2006年 1月 31日

    夕凪さま TBとコメントをありがとうございました。
    ブログを読ませて頂きました。ついつい読み入ってしまいました。
    私は夏休の宿題の「読書感想文」を先生に「あらすじではありません」と注意されて以来感想文は苦手です。
    その時に「他の人が読みたくなる感想文を書きなさい」と云われた事をよく覚えています。
    夕凪さんに「読みたくなる」といって頂いて、ん十年ぶりに宿題を済ませたような気持ちになりました。
    ありがとうございました。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

skogBLOG内の記事検索

カテゴリー

過去の記事

書評・レビューの情報収集

ブログランキングで書評・レビュー関連の情報を収集できます!
ページ上部へ戻る