「懐かしさに包まれて 〜あの頃のskogとパンの香り〜」

パソコンの中から懐かしい写真が出てきた。2016年、今から8年前の写真である。その年の3月7日、私は「新米店主の卒業式」というBlogを書き、skogの10年間を締めくくった。

振り返ってみると、思い出すのは楽しかったことばかり。当然、しんどい日もあったはずなのに、不思議と苦労の記憶は残っていない。今となっては「続けていたらもっと楽しい場所にできたかもしれない」と思わないわけではないが、それは全てが終わったからこそ言えることだ。

2017年から2021年にかけては、二人の姉の介護があった。付き添いが長引く介護で、お客様や作家様にご迷惑をおかけした事と思う。だからこそ、思い切ってskogを閉じたことは良かったと感じている。今はただ、懐かしい思い出として心に残るだけ。

写真に写っているのは、娘が焼いたパンである。


私と娘が二人でパリを訪れた時に食べたパンの香りが忘れられないと、急にパン修業を始めた娘は、企画展の期間中には沢山のパンを焼いていた。早朝から仕込みをしてくれて、私がskogに出勤する頃には店内にパンの香りが溢れていたものだ。今でもパンの香りはskogの想い出に繋がる。

お気に入りだったのは、skogから眺める美しい風景だ。



カウンターから一望できるその景色は、季節ごとに色を変える山々を1年中楽しませてくれた。今ほど道路も混んでおらず、穏やかな時間が流れていたことを思い出す。1階に目をやると、お客様の楽しそうな声が聞こえてくるようだ。


1年のうち半分だけ、月に5日だけの企画展だったが、それでも多くの方々が足を運んでくださった。「長い目で見れば人生には無駄がない」と言ったのは本田宗一郎さんだが、あの比良での生活がなければ今の私はなかった。老後という名のもう一つの青春だった

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