おにゅう峠から迎える正月 ― ヒカゲノカズラの蓬莱飾り

11月の初め、滋賀県と福井県の県境、標高約820メートルに位置するおにゅう峠へ、ヒカゲノカズラの採集に出掛けた。
紅葉がちょうど見頃を迎えていた頃で、山の空気は澄み、足元には秋の名残が広がっていた。

採集したヒカゲノカズラは、それからおよそ二か月、水に漬けて保存した。
そしていよいよ、お正月の蓬莱飾りを作る日がやってきた。今日は午後から制作を始めることにした。

ヒカゲノカズラだけで厳かに仕上げる方法もある。
けれど、南天を添えるのも面白いかもしれない。紅白の水引はどうだろう。
そんなことを考えているうちに、あれこれと材料を集めすぎてしまい、気が付けば「どう作ればいいのか分からない」状態になっていた。

毎年おにゅう峠へ出掛けるようになった理由の一つは、ヒカゲノカズラの蓬莱飾りを、厳かに飾りたかったからに他ならない。
しかしヒカゲノカズラは、思い通りの長さで採集できる植物ではない。
昨年はワイヤーでつないで長さを補ったが、どこか自信の持てない仕上がりになってしまった。

今年は新しい採集場所を見つけた。
若々しいヒカゲノカズラが、地面を這うように伸びていた。
例年よりも状態の良いものを採集できたおかげで、思いのほか満足のいく蓬莱飾りが出来上がったと思う。

制作でいちばん手間がかかったのは、ヒカゲノカズラの掃除だった。
何しろ「日本最古の植物化石」ともいわれる植物で、至るところから細かな根が伸びている。
それを一本一本、丁寧に整えていく作業は、時間はかかるが嫌いではない。

ヒカゲノカズラは、およそ4億2千万年前の祖先とほぼ同じ体づくり『茎と根の仕組み』を今も保っているという。
そう思いながら触れていると、年に一度だけでも、生命力の塊に直接触れているようで自分の手が、はるかな時間の流れの一部になったような感覚を覚える。

採集に行けるあいだは、この蓬莱飾り作りもまた、お正月を迎える大きな楽しみの一つである。

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