わたしの台所 – 沢村 貞子

「7日間ブックカバーチャレンジ」のバトンを頂いて、久しぶりに本箱を見直す機会を得た。
本の始末は早い方なので段ボールで何箱も送り出したこともある。
それでも家に残る本は新刊か、手放せなかった本になる。

「わたしの台所を」を見つけた時は嬉しかった。
沢村さんの本は「私の茶の間」や「貝の唄」等々全て読んでいる。けれど例によって「読んで、読んで」と回しているうちに分からなくなった。
沢村さんの本は読後の「残り香」が何ともたとえ難く良い。
再び「わたしの台所。」を読み始めた。
あ〜そうそう、こんな言葉に背中を押されたんだと、すらすらと思い出す。
有名な女優でありながら地に足が付いた生き方が小気味よく書かれている。
怒りの沸点が低い私は「佐藤愛子」や「内館牧子」の本を読んでみたけれど、ちょっと違う。
「沢村貞子」の本には怒りたくなることや、お説教はどこにもない。
けれど、道理を通して颯爽と歩く姿が清々しく、頭の中がすっきりした。

例えば、「暮らしの中の匂い」
昔の下町で、親が娘の化粧をうるさく言ったのは、みそ汁がおしろい臭くなるのを嫌がったからだろう。
普段の化粧はほどほどに。
暮しの中の匂いと言うものは、あるかなきかにしておかないと、お互いに飽きが来るのではないだろうか
「中掃除、小掃除」
下駄箱の掃除は小娘の私の役目だったのに、つい怠けすぎてひどく汚れてしまったことがあった。叱られてフウフウ言いながら拭いていると私の後ろで母が言った。
「お金を貯めれば利息が付くけれど、汚れをためればイキが切れるだけさ」

今こう言える親はお目にかかれない。もちろん私もよう言いません。
沢村さんは私の母と同じ明治の女、私は、母に同じようなことを言われていたような気がする。
沢村さんは、「それにしても、うちは息子がなくて良かった。これではどんなに利口なお嫁さんもとても務まらないに決まっている」と結んでいる。



この本の通りにしなければいけないわけではないけれど、知って損なことは一つもない。
若い方に是非読んで頂ければ嬉しい。


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