バラの季節、庭の楽しみ

目が覚めるとまず居間のブラインドを開けて朝一番に庭の様子を確認するのが習慣となった。
窓の向こうに広がる小さな庭は、毎日少しずつその表情を変えている。
その変化を眺めるのが、近頃の何よりの楽しみである。あのバラが咲き始めたとか、昨日よりも花数が増えているとか、風が強い日はせっかく咲いた花が散ってしまうのではないかと気を揉むこともある。こうして庭に向き合う時間が、心を落ち着かせてくれる。
実を言えば、庭の花々がここまで生き生きと咲き誇るようになったのは、俄然勉強熱心になった家人の努力によるところが大きい。パソコンで丹念に調べ、バラの手入れや草花の切り戻しの方法を学び、試行錯誤を重ねている。その成果は確実に現れており、庭全体がかつてないほど華やいでいる。
しかし、すべてが順風満帆というわけではない。今年は、どうしても花首を上げないバラが二株ある。パフビューティとクラウンマルガリータ、いずれもイエロー系の花である。茎を丹念に観察しても虫らしきものは見当たらず首をかしげていたが、薔薇の師匠にLINEをしてみると、即座に「カミキリムシではないか」との答えが返ってきた。そう言われてみれば、茎の中に虫が入れば水を吸い上げることができなくなるという知識はあったものの、まったく頭に浮かばなかった。まだまだ修行が足りぬと痛感した次第である。
さらに言えば、ついつい種を採っては蒔きすぎたせいで、花のそばにすら近づけない有様となっているのも反省点のひとつである。せっかく作った園路は、今や花々に埋もれてどこにあるのか分からなくなってしまった。狭い庭ゆえ、引き算の美学をもっと心得ねばならぬ。
それでもやはり、バラの季節は格別である。咲き乱れる花々の間をそっとすり抜けながら、日々変化する庭の表情を味わう時間は、何ものにも代えがたい。庭と共に暮らすことの喜びが、今年はひときわ深く感じられるのである。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。