いのちー3

手の震えを我慢して書いたような字の葉書がポストに入っていた。
オープンの日、真っ白な胡蝶蘭が届けられた。
夜になって、携帯に電話をすると、聞いた事もないような弱々しい声で
「the end」と呟やいた。
数日前まで飲んでくるといっていた人がである。
胡蝶蘭のお礼がやっとで、次に云う言葉を無くした。
励ますのも、空々しいが励ますべきだったのかと後悔をしていた。
その数日後から放射線と抗癌剤の治療が始まればもっと苦しい事と察するだけに電話も出来なくなって40日が過ぎた。
今日ポストに入った葉書には、「早くskog に行きたい事と、肝臓への転移が大きく厄介なので、足からカテーテルで直接肝臓めがけて抗癌剤をいれる、ということと入院が長引いて疲れている事」が綴られていた。
直ぐに電話をかけると、少しは元気を装う声で出てくれた。
「しんどい?」「うん」
「本読める?」「読めない」
「テレビはみるの」「皆が笑っている番組は笑えない、何が面白いのかも分からない。だから見ない」
もうひと月すると行けると思うからと未だ私の店を気遣ってくれる。
「病院にはいかないよ」「うん」
最後に会ったのは今年の2月の博多だった。ほろ酔いでタクシーに乗る後ろ姿。
その時のままでいて欲しいから、病院にはいかない。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

skogBLOG内の記事検索

カテゴリー

過去の記事

手芸・ハンドクラフトの情報収集

ブログランキングで手芸・ハンドクラフト 関連の情報を収集できます!
ページ上部へ戻る