ネットとドライブのあいだで暮らす、私の買い物時間

晴れた日だけでなく、雨の日であっても宅配便の車は玄関先まで荷物を届けてくれる。
便利な時代になったものだとしみじみ思う。
日用品から洋服まで、ネットで買い物をするようになって何年になるだろうか。
段ボールを開けるときの小さな高揚感も、すっかり日常の一部になった。

気が付けば、買い物のためにデパートへ出掛けることはほとんどなくなった。
天井の高いフロア、整然と並んだ売り場、行き交う人の流れ――思い出せば華やかな場所なのに、最近は出掛ける楽しみよりも、しんどさの方が先に立つ。広い床を歩くだけで足が重くなり、ベンチを探してしまう自分がいる。
もちろん、今のような買い物の手段がなければ出掛けるしかなかったのだろう。
けれど、疲れて苦痛になるくらいなら、家にいながら必要なものが届くこの時代はありがたい。そう思いながら、私はすっかりネットショッピングを享受している。

それでも、ときどき県外の大きなスーパーへ出掛け、食材をまとめ買いすることがある。
高速を降り、見慣れない町の看板を眺めながら車を走らせる時間は、ちょっとした小旅行のようだ。駐車場に車を止めて店に入ると、空気の匂いまでどこか違って感じる。
県が変われば同じ野菜でも値段が違い、山積みにされた旬の野菜や、見慣れない加工品が目を引く。
最近は、デパートよりもJAでの買い物の方がずっと心が弾む。
朝採れの野菜が並ぶ棚、土の匂いが残る大根、艶のあるリンゴやみかん。農家さんの名前が書かれた札を見ると、その畑の景色まで思い浮かぶ気がする。

今のところ、私の行動範囲は半径150km。北陸や信州、和歌山あたりまでがテリトリーだ。
どこも決して近くはないけれど、車窓に流れる山並みや空の色、道の駅でのひと休みも含めて、気分転換を兼ねたちょっとしたレジャーになっている。
やはり、生鮮食品だけは自分の目で確かめなければ気が済まない。
手に取って重みを感じたり、葉の張りを見たり、魚の目の澄み具合を確かめたり――そんな時間が、買い物の実感そのものなのだと思う。

いつかはこれもネットに変わるのかもしれない。
それでも、まだ行けるうちは、店先に並ぶ季節の果物に誘われて、車を走らせたい。
甘い香りの桃、箱いっぱいのみかん、透き通るようなぶどう――売り場に立つだけで、季節が手のひらに乗るような気がする。

便利さに背中を押される日常と、わざわざ出掛けて味わう時間。
どちらが良いとも言えないけれど、その両方を行き来しながら暮らしている今が、私にはちょうどいい。

今日もまた玄関には日用品の
段ボールが届き、冷蔵庫には遠くの町で買った野菜が並ぶ。
そんな光景を眺めながら、私は思う。
買い物とは、物を手に入れることだけではなく、そこへ向かう気持ちや時間までも連れて帰るものなのだと。

次はどこへ走ろうか。
季節が変われば、きっとまた果物の香りが私を誘い出す。

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