免許更新という一時間の出来事

運転免許歴は六十年を超えた。運転試験場の試験官が生まれる前から、こちらはハンドルを握っていたのではないか、などと内心思いながら免許証の更新に出かけた。
免許センターへ行けば即日免許証が交付されることは分かっていたが、待ち時間が長いに違いないと、これまでは敬遠してきた。ところが最近は琵琶湖大橋を渡る機会も増え、土地勘もついてきた。今回は思い切って免許センターで手続きをすることにした。
受付は八時半からとのことだった。到着してみると、駐車場はほぼ満車、建物の中では免許の種類ごとに色分けされた通路に沿って、多くの人が列を作っていた。

その免許の種類というのが、従来の免許証、マイナ免許証、そして両方に登録する免許証の三種類である。
マイナ免許証は本人確認や住所変更が便利になるらしいが、後期高齢者にとってはどうにもメリットが少ない。
迷うことなく、従来の免許証の列に並んだ。
見回すと、やはりこの列が一番長い。しかし行程はすべてライン化されており、列は思いのほかスムーズに進んでいく。気が付けば手続きは終盤、料金支払いの窓口に立っていた。そこでは「PayPay」での支払いが可能で、支払いを済ませると、すぐに写真室へ案内された。
ここで、ふと以前の免許証を取り出してみた。
あれ、まあ——三年前と同じセーターではないか。
カメラの前の椅子に座ると、あっという間にシャッターが切られ、「次の部屋でお待ちください」と告げられた。待つこと十分もかからず、新しい免許証が交付された。免許センターのドアをくぐってから、まだ一時間も経っていない。
それまでに二度受けた認知機能検査や実技講習の方が、よほど時間がかかったのである。
しかしである。同じセーターを着ているにもかかわらず、写真に写った私は三年前とはまるで別人であった。これには正直、がっくりきた。
今や身分証明の主役はマイナンバーであり、免許証の写真など、実生活ではどうでもよい——そう思おうとした。
それでも、次回の更新は美容院に行ってからと、心に決めたのである。
写真の出来が気になってしまう、この気持ちがまだ残っていることが、我ながらおかしかった。
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