訛りの聴こえる正月

テレビで帰省する人たちの様子を眺めながら、ワクワクと実家へ帰っていた頃のことを思い出した。
なかでも一番印象に残っているのは、湯布院・亀の井別荘の「天井桟敷」というカフェである。
窓際の席に腰を下ろし、外に目をやると、白い壁の倉庫の軒先で干し柿が揺れていた。
耳に入ってくるのは、他府県の言葉。
啄木の短歌に
「ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聞きにゆく」
という一首がある。
ここでは、故郷の訛りも、関東の言葉も、入り混じって聞こえてくる。
それを聞くともなく聞きながら、ふと、啄木の短歌の世界に身を置いているような気がしたものだった。
今はもう、帰るべき故郷はなくなり、家族だけで静かなお正月を迎えている。
元日は関西の白みそ雑煮、二日目は九州のお澄まし雑煮。

元旦には、お節とは呼べない程度の料理を並べ、小さなワインを一本開けた。
アルコール度数七パーセントのワインで、あっさりノックアウトである。

二日目のお節はさらに縮小気味。

それでも家族は満腹で、食卓は十分に賑やかだった。
午後には、明日88歳の誕生日を迎えるご近所さんを囲んで、ささやかな食事会をした。
ときおり、風に連れられた雪が庭に舞い始め、二日目のお正月もお開きとなった。
何気ない日常の繰り返しの中で、
お正月は、ほんの少し彩を添えてくれる。
それで十分なのだと、そんなことを思いながら、今年の正月を過ごしている。
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