手土産文化

向田邦子の本によると、人間は「スグミル種」と「ミナイ種」に分かれるそうだ。
何のことかと言うと、手土産をスグミル人とミナイ人の区別だ。
私は典型的な「スグミル種」に属する。
スグミル種の人に、どのタイミングで手土産を渡すのか。
それは、持って来た人の裁量任せ。
奥ゆかしい方は、帰り際にそれとなく置いてゆくのだとか。
それでは「スグミル派」には堪らない。話も上の空になりお客様に「早く帰って頂きたい」と思うほどだ。
スグミル派の向田の事を、妹の和子は「姉は帰り際に、なにげにリップ等を渡してくれる気遣いの人だった」と他の本に書いている。
今時、こんな奥ゆかしい手土産の渡し方には中々出会わない。

手土産を風呂敷に包んでと言う事も無い。
箱も包装紙も上等になり、紙袋のままお渡ししても失礼には当たらない。
少なくとも私は、そう思っている。
気を遣う場面も少なくなった今は、渡し方も受け取り方も簡単になった。
「こんなもの見つけたよ。あなた好きでしょ」と私がモジモジと気にする間もなく渡される。
私も同じことをしている。
奥ゆかしさはないけれど、その場で開けて喜んでくれると私も嬉しい。
頂いた持ち重りのするお土産を、ウィスキーだろうと推測して、大事に取り置きをした。
いよいよそのウィスキーを好むお客様が見えた時に開けたらいきなりブワーッと青い煙が立った。中身は鹿児島の銘菓「かるかん」だったという失敗もある。
私じゃないですよ。本に書いている。
私の場合、外で会って重いものは帰り際にお渡しする事もあるけれど、大抵直ぐに「開けて、開けて」と連呼している。
喜ぶ顔が見たくて用意したんだもの。

日本文化の奥ゆかしさはないけれど、令和の「奥ゆかしさ」は相手との距離感で決まる是々非々でいいのでは。

お土産を上手に渡すことは、案外難しいのかもしれない。

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