「ウナギの寝床」訪問記 ー 地域から発信する力に惹かれて

九州の筑後地区に「ウナギの寝床」という、ユニークな名称の店舗がある。
私がこの「ウナギの寝床」のモンペに初めて出会ったのは、京都市にある「D&DEPARTMENT KYOTO」であった。あれは何年前のことだったろうか。まだ「ウナギの寝床」の知名度が、今ほどではなかった頃である。
その時、私は「ウナギの寝床」に、石見銀山・大森町の「群言堂」と同じ匂いを感じた。場所は、九州・福岡県八女市。たしか、過疎が進んだ町という印象があった。
しかし、八女市は行政地域一体となって町おこしに取り組み「ウナギの寝床」もその一環である。

九州に帰省する機会があれば訪ねようと思っていた。その機会を得て、かなり無理のある日程ではあったが、八女市まで足を伸ばすことにした。
「ウナギの寝床」が拠点とする八女市の街並みは、同じ福岡県内の吉井町と似た白壁の建物が並び、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

「ウナギの寝床」のホームページを読み、その理念にすっかり魅了された。創業者は私の半分ほどの年齢の若者であり、「地域文化商社として対話を生みたい」という思いのもと、事業を立ち上げたという。
その理念は、潜在化している地域文化を掘り起こし、広く顕在化させていくことに重きを置いている。現代では、どこにいても情報発信が可能である。魅力的な発信であれば、人は自然と集まるものだ。


私が訪ねたのは土曜日であったが、八女の町には多くの観光客が訪れ、街並みを散策していた。昼時には行列ができる飲食店もあり、地域からの発信が着実に成果を上げていることがうかがえた。

「ウナギの寝床」のモンペは、一度履くと手放せなくなる履き心地である。価格は、普段着としてはやや高めであろうか。しかしその理由は明確で、使用されている生地は、それぞれの産地で丁寧に作られた“本物”であるからだ。
私が最初に購入したのは、久留米絣のモンペであった。久留米が近いこともあり、種類も豊富に取り揃えられていた。通常、ブティックで久留米絣を購入しようとすれば相応の覚悟が必要だが、「ウナギの寝床」であれば、その五分の一ほどの価格で手に入る。
「ウナギの寝床」の本店がある八女市は、若い創業者が地域文化を外へと発信する拠点として選んだ場所であり、その理念と行動力には感銘を受けた。
久留米絣のモンペは、実用的で生地もしっかりしており、長く使える。落ち着いた町並みに多くの観光客が訪れている様子を見るにつけ、地域からの発信が実を結んでいるのだと感じた。遠回りをしてでも訪ねる価値があったと、心から思う。

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