能舞台で味わう桂吉弥

大津伝統芸能会館で桂吉弥独演会を聴いた。
会場は満席。落語好きの期待が、そのまま空気になっているようだった。
能舞台ゆえ柱が視界に入るが、不思議と気にならない。語りが始まれば、目は自然と高座に吸い寄せられる。

一席目は「かぜうどん」。
私が吉弥のファンになるきっかけとなった噺である。
うどんの湯気や夜の屋台の冷えまでが、今回も鮮やかに立ち上がった。知っている噺で、また同じところに心を動かされる。
続く「ホース演芸場」は初聴き。
昭和の演芸界を思わせる人物や音楽が次々に現れ、楽屋話のディテールがあまりにリアルで、フィクションであることを忘れてしまうほど。
観客がすっかり納得してしまったのを察してか、最後に「さきほどの演芸場の話はフィクションです」と念を押し、もう一度笑わせるのも吉弥らしい。
締めは「親子茶屋」。
結末は分かっている。それでも、会場が変わるだけで噺の表情が変わるのが落語の面白さだと、あらためて思う。
中入りを含めて二時間。
囃子も冴え、能舞台の設えと相まって、贅沢な時間だった。
一月とは思えない穏やかな陽気の中、気分の軽さをそのまま家路まで持ち帰った。
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