風を聴く、山を感じる――2026『かんじる比良』の一日

5月16日、17日に開催された かんじる比良 2026 は、快晴に恵まれた。
吹き抜ける風は爽やかで、まさに“かんじる比良日和”という言葉がぴったりの二日間だった。

この企画を立ち上げてから、もう20年ほどになるだろうか。
今ではすっかり地域に根付いたイベントへと成長しているようだ。

現在の運営委員には、もう私の知らない若い世代の方々が多い。
広報を目にするたび、その変化には驚かされる。おそらく、私が関わり続けていたら思いつかなかったような発想が次々に取り入れられ、イベントは時代に合わせて軽やかに変化していた。

正直、「えっ?」と思った時期もある。
けれど、時代は変わる。人が変われば感性も変わる。イベントもまた、その時代の空気を映しながら変わっていくのが自然なのだろう。
イベントは立ち上げるよりも継続が難しい。
20年間続くイベントに育ててくれたと、感謝の気持ちしかない。

それにしても、「かんじる比良」という名前は、今思えばなかなか良い。
かつては「比良ってどこ?」と言われたものだが、そんな頃が懐かしく思い出される。

今回私は、「かんじる比良」の名物にもなっている「ほっとらいんコンサート」を聴きに、比良駅前の ほっとすてーしょん へ出掛けた。

この日のメニューはバイキング。
しかし、ここのバイキングは普通ではない。

もしかすると、日本一珍しいバイキングかもしれない。
なぜなら、並ぶ料理がすべて“おばんざい”なのである。

洋風の華やかな料理はない。
けれど、ひと口食べるたびにじんわり身体へ染み込むような、やさしい味が並んでいる。その味を求めて、大勢のお客様が訪れていた。

私が少し出遅れてしまった時には、並んだ大皿はすでに空っぽ。
次々と新しい料理が運ばれてくるのだが、それでも追いつかないほどの盛況ぶりだった。

それでも不思議と誰も急かさない。
吹き抜ける風に当たりながら、のんびり料理が出来上がるのを待っている。その空気感が、いかにも比良らしい。

やがて畑で「ほっとらいん」のコンサートが始まる時間になると、皆そろって畑へ移動した。

私が一番好きな「ほっとらいん」のステージは、やはりここである。

大自然そのものが舞台。
大きなタープが広げられた客席には心地よい風が吹き抜け、目の前には比良の山々、そして抜けるような青空が広がる。

ギターとコカリナの音色は、空へ吸い込まれていくようだった。
ここでなければ味わえないコンサートが始まった。

この日は、たくさんの曲名が印刷された紙が配られ、観客のリクエストで演奏曲を決めていく趣向だった。

懐かしい曲も並んでいる。
「これはぜひリクエストしたい」と、私は手を挙げる瞬間を待っていた。

「はい、リクエストをどうぞ」

その声と同時に、勢いよく手を挙げた。

「麦の歌」

今、NHK朝ドラの再放送で毎朝耳にしている曲だ。
あの歌を聴くと、不思議と勇気が湧いてくる。

その後も次々にリクエストが続いた。
時折、すぐそばを走る 湖西線 の電車が轟音を響かせ、演奏が聞こえなくなる。けれど、それすらもこの場所の味わいのひとつになっている。

30分の予定だったコンサートは40分へと延び、最後は「琵琶湖周航の歌」の合唱で幕を閉じた。

初めて聴いた友人は、すっかり感激していた。
一昨年このコンサートに参加した方は、その後コカリナを始めたという。

びわ湖に広がる波紋のように、小さな輪が少しずつ人の心へ届いていく。
そんな静かな力を感じる、嬉しいひとときだった。

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