走る旅のご褒美は、気取らない美味しさと心地よさ

― 信濃大町くろよん再訪記 ―

ここ数年、一日の走行距離が500kmを超えるようなら宿泊するようにしている。
日の出から日没まで外にいることがほとんどなので、ホテルに求めるものは実にシンプルだ。
清潔なベッドとバス。
それで十分、というのが基本である。

そんな旅の中で、近くに来ればつい立ち寄りたくなるホテルの条件がある。
それは「朝食が美味しいこと」。
気軽に食べられて、なおかつコストパフォーマンスが良いこと。それが何より大事だ。

先日宿泊したのは、大町温泉郷にあるANAホリデイ・インリゾート信濃大町くろよん。
ここは二度目の訪問になる。前回の印象が良く、再訪を決めた。

アルプスの山々が間近に迫り、周囲は豊かな緑に包まれている。
天然温泉の露天風呂もあり、環境としては申し分ない。

今回は朝夕ともにビュッフェ。
料理は分かりやすく整然と並び、どこに何があるのか一目で分かる。
全てを制覇するには、最低でも三泊は必要だろう――そんなことを考えながら、信州らしい蕎麦などを少しずついただいた。

空いた皿がすっと下げられていく。
この当たり前のようでいて、最近ではなかなか見かけなくなったサービスが心地よい。
知らん顔のホテルも多い中で、さすがはANAリゾートだと素直に感じた。

そして、このホテルに高得点をつけたくなる決定的な理由がある。

朝食に「カマンベールチーズ」があったのだ。
それも、丸ごと一つ。好きなだけ切り分けてよいというスタイルで、専用のカッターとナイフが添えられている。

このカッターがまた、実に気持ちよく切れる。
それだけで、私の満足度は一気に頂点に達した。

さらに、お馴染みの卵料理。
オムレツやハムエッグなどが並ぶ中、オーダー制のスタイルになっていた。
テーブル番号を書いたカードを渡しておくと、出来上がった料理が席まで運ばれてくる仕組みらしい。
待つ必要がないのは、これもまた快適だ。

しばらくして席に戻ってきた友人が声を上げた。
「ええー、目玉焼きが二つもあるの?」

その瞬間、私は妙に納得してしまった。
目玉焼きとは、そもそも二つで一人前なのではないか――と。
なにしろ“目玉”は二つあるのだから。
旅先で得た、どうでもいいようで妙に腑に落ちる新しい知識である。

朝食は夕食に劣らないほどのバラエティで、季節先取りのメロンまで楽しめた。
こういう小さな驚きが、旅の記憶を豊かにしてくれる。

年間に何泊かホテルに泊まるが、ここは私の中ではかなり上位に入る。

これまで「ホテルは眠るだけ」と思っていた。
しかし、リゾートホテルにはビジネスホテルにはない“寛ぎ”がある。

ただ眠るだけではない。
滞在そのものを楽しむ場所としての魅力を、改めて教えられた気がした。

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