桜の余韻の先で、アルプスに圧倒された朝

早起きをして、大町市の鷹狩山山頂展望台へ車を走らせた。
鷹狩山の標高は1,164メートル。
道中は急こう配や狭い区間も多く、できればすれ違いたくない道が続く。
それでも平日の朝8時台、離合の心配はほとんどなく、静かな道を上がっていくことができた。
途中は木立に遮られて景色が見えにくい。
だが頂上付近に差しかかった瞬間、ふいに視界が開けた。
北アルプスの山々が、いきなり目の前に現れた。
頂だけではない。麓から頂上まで、山の全てがくっきりと見える。
思いがけず、その全容を目の当たりにしたとき、
声も出ないまま、ただ見続けていた。

前日は、小川村で美しく輝く北アルプスを見てきた。
あれほどの風景を見たあとでは、今日あらためて山を眺めても、
どこか物足りなく感じるのではないか——そんな思いもあった。
だが、それはまったくの杞憂だった。
ここからは、北は白馬岳、南は常念岳まで、
北アルプスの山並みを一望できる。

ここは“山を眺めるための場所”だった。
雄大な山脈と、その足元に広がる大町の町並み。
小川村が桜色のやわらかな風景だとすれば、
ここにあるのは、山肌をむき出しにしたアルプスの姿だった。
展望台の望遠鏡をのぞくと、山の奥まで見通せる。
登山者の姿が見えるのではないかと目を凝らしたが、そこまでは届かない。
ただ、切り立つ峰の険しさだけは、はっきりと伝わってきた。
この一帯は、後立山連峰とも呼ばれている。
数日前、雨晴海岸から眺めた立山連峰は、いわゆる“表”。
期せずして、立山連峰の“表と裏”を、短い間に見ることになった。
こんな巡り合わせは、これまでなかった。
北陸道を走っても、なかなか姿を見せてくれない立山。
それを思えば、この数日の出来事は、出来すぎている気さえする。
——少し、出来すぎている。
そんなふうに思いながらも、
しばらくその場を離れられずにいた。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。













この記事へのコメントはありません。