花遊庭、最後の五月——閉園を惜しんで訪れた豊田の庭

愛知県豊田市にある ガーデニングミュージアム花遊庭 が、今月末で閉園するというニュースが流れた。

花遊庭は1300坪もの広大な敷地に、28ものテーマガーデンが点在する美しい庭園である。
初めて訪れたのは、15年以上前になるだろうか。

当時、とりわけ印象的だったのは、ヘッドガーデナー・ 天野麻里絵 さんによる計算し尽くされた植栽だった。花の色合わせや高低差、開花時期のつなぎ方まで見事で、庭全体がまるで一枚の絵のように感じられたのを覚えている。



地域が違えば、他所で見事に咲いていた花が近畿ではうまく育たないこともある。
その点、花遊庭の環境は我が家とどこか近く感じられ、「ここで元気に育つなら、うちでも咲くかもしれない」と期待を抱いた。帰りには隣のナーサリーで同じような苗を買い込み、“我が家もいつかこんな庭に”と夢を膨らませたものだった。

コロナ禍以降、すっかり足が遠のいていたガーデン巡り。
そんな折に飛び込んできた突然の閉園報道には、本当に驚かされた。

毎年通っていたわけではない。
それでも、「もうなくなる」と聞いた途端、どうしても行かずにはいられなくなった。
五島から帰ったばかりで疲れも残っていたが、閉園を受け入れきれない自分の気持ちを収めるためにも、混雑する最終日近辺を避けて出掛けることにした。

開園10時前に到着したものの、すでにチケット売り場には長い列ができていた。
きっと皆、それぞれの思いを抱えて、この庭に別れを告げに来たのだろう。どこか静かで、少し元気のない行列だったのが印象に残っている。

園内では、いつもと変わらぬように花々が咲き乱れていた。
あまりに美しく整えられていて、閉園する庭とは到底思えない。


訪れた人々は、スマートフォンを片手に、少しでも多くの風景を残そうとしていた。
人気の小径では人が途切れず、皆がそれぞれの「花遊庭」を持ち帰ろうとしているように見えた。

この美しい景観は、天野麻里絵さんをはじめ、スタッフの方々の並々ならぬ努力の積み重ねによって守られてきたものなのだろう。
閉園が決まった後も、最後の日まで変わらぬ姿を保とうとしていることが、庭の隅々から伝わってきた。


そして何より、訪れている人たちの表情には、この庭を惜しむ気持ちがはっきりと表れていた。

もし自分に十分な資産があったなら、この庭を引き継ぎたい。
そう本気で思ってしまうほど、花遊庭の閉園は残念でならない。

美しい庭は、ただ花が咲いているだけでは生まれない。
そこには、季節を読み、植物を知り、毎日手を掛け続ける人の時間と情熱がある。

花遊庭は、その積み重ねを見せてくれる、かけがえのない場所だった。

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