かんてんぱぱの森が心地よい理由

伊那谷へ行くと、グリーンファームと同じように、必ず立ち寄る場所がある。
かんてんぱぱで知られる伊那食品工業である。
買い物だけの時もあるが、今回は本社のある森でランチを楽しんだ。
ここへ来るたびに感じるのは、不思議な安らぎである。
食品会社だから清潔なのは当然として、それ以上に人を優しく迎え入れる空気が流れている。
アカマツの森には、急な雨に備えた「置き傘」があちこちに置かれている。
「どうぞ、お使いください。」
そんな言葉が聞こえてきそうな心配りである。
健康パビリオンでは体力測定や骨量測定ができ、美術館やホールも森の中に点在している。
買い物に来たつもりが、いつの間にかゆっくりと時間を過ごしてしまう。
森を歩くたびに、ここで働く人たちが羨ましくなる。
この環境で毎日仕事ができることは、きっと幸せなことだろう。
そんな場所である。
今年六月、伊那食品工業代表取締役会長の塚越寛さんが逝去された。
買い物をすると同封される写真は、塚越会長ご自身が撮影されたものだった。
柔らかな光に包まれた伊那谷の風景や花には、写真を撮る人の温かな人柄まで映っているように感じていた。

塚越会長は、
「私は会社の役目とは、人々を幸福にすることだと考えています。それはきれいごとや建前ではありません。なぜなら、人々の幸せを追求するいい会社には、かならず経営にプラスの影響があるからです。」
という言葉を残されている。
初めてこの言葉を知った時、「だから、この会社はこんなに居心地がいいのか」と思った。
会社の空気は、理念によって育まれるものなのだろう。
競争が当たり前になった時代だからこそ、この考え方は新鮮に映る。
東に赤石山脈、西に木曽山脈。
その雄大な自然に抱かれた伊那谷で育まれた、この穏やかな企業風土が、これからも受け継がれていくことを願っている。
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