桃のあとに、海が待っていた

和歌山では桃の買い出しで苦い思いをした。

けれど、この日の目的地はもう一つあった。
箕島漁港である。

有田市といえば、まず有田みかんを思い浮かべる。
しかし、この町は太刀魚の漁獲量が日本一を誇る漁業の町でもある。
太刀魚の旬は六月から十月。
「行くなら今でしょう。」

桃農園からは三十五キロほど。
道路整備が行き届き、海へ向かうドライブは思いのほか快適だった。

港へ近づくと、大きな住宅が立ち並び、私が想像していた「ひなびた漁港」の風景とはまるで違っていた。
港には大きな底引き網漁船が何隻も係留され、その迫力に思わず足が止まる。

さらに驚いたのは、漁港にある「浜のうたせ」である。
マルシェとレストランを備えた施設は、漁港とは思えないほど洗練されたデザインだった。


ここで頂いたのは海鮮丼。
その日水揚げされた魚が並ぶ中に、目当ての太刀魚の刺身もあった。
太刀魚といえば焼き魚。
そんな思い込みがあったので、刺身を口に運ぶ時は少し緊張した。
ところが、一口食べると驚いた。
上品な甘みが広がる。
太刀魚は焼くだけの魚ではなかったのである。
この一皿を頂いただけでも、箕島まで足を延ばした甲斐があった。

箕島漁港は、大阪湾の内海の海流と、黒潮の分流が交わる海域にあるため、水産資源が豊富なのだという。

果物に恵まれ、海の幸にも恵まれた和歌山。
桃では少し悔しい思いもしたけれど、この漁港でその気持ちはすっかり和らいだ。
和歌山には、まだまだ知らない魅力がある。

これからは桃だけでなく、この海の幸にも会いに、足しげく通うことになりそうである。

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