久賀島潜伏キリシタン資料館で知ったこと

ドライバーさんに案内されて訪れたのは、「久賀島潜伏キリシタン資料館」だった。
入口のマリア像がなければ、普通の民家にしか見えなかった。
それもそのはずで、この建物は、久賀島で迫害を受けた潜伏キリシタンの子孫が所有していた民家を改修して作られた資料館なのだという。
2018年12月13日に開館し、この地の歴史を後世へ伝える役割を担っている。
館内には、マリア観音や木製の十字架、ミサの合図に使われたホラ貝、廃堂となった教会の装飾品など、多くの信仰資料が展示されていた。
その中で、私が最も衝撃を受けたのは、「牢屋の窄」の広さを赤い線で示した展示だった。
「この場所に200人以上が閉じ込められていた」
そう説明されると、先ほどまで歴史として聞いていた出来事が、一気に現実味を帯びて迫ってきた。
さらに意外だったのは、一枚の結婚写真だった。
白無垢姿の花嫁の隣に神父が立っている。
和装の結婚写真の展示を最初は不思議に思ったが、その写真の主は、資料館を管理されている方ご本人だった。
そして、その結婚を祝福した神父こそ、2025年のコンクラーベで投票権を持っていた日本人枢機卿の一人、前田万葉枢機卿だったのである。
前田枢機卿の最初の赴任地が浜脇教会であり、その頃に撮影された写真だという。
世界のニュースで見る「枢機卿」という存在が、久賀島では急に身近な人の話として語られていたのが印象的だった。
ここで私は、以前から気になっていたことを尋ねてみた。
「カトリックの人は結婚できるのですか?」
すると、
「神父様は独身ですが、普通の信徒は結婚できます。ただ、離婚はできません」
と教えていただいた。
キリスト洞窟に案内してくれた船長さんは神父様とドライバーさんにお聞きしてた。なぜ結婚できたのか?
ここのところでモヤモヤ。分かった事は、隠れキリシタンに神父は存在しない。宣教師に代わって洗礼を授ける「水方」や、教義を伝える「帳方(ちょうかた)」といった指導者を選び出した。
これらの指導者は一般の信者となり家庭を営みながら隠れて進行に励んだ。と言う事でモヤモヤも解決。
二泊三日の五島の旅だった。
けれど、教会を巡り、洞窟を訪ね、人々の話を聞くうちに、キリスト教の受難の歴史が、少しだけ自分の中へ入ってきたように思う。
禁教が終わってから、まだ160年ほどしか経っていない。
そう思うと、キリスト教迫害の歴史は決して遠い昔の話ではないのだと感じる。
これから船に乗り、飛行機を乗り継ぎ、7時間後には自宅へ戻る。
旅に出る前と後で、自分のものの見方が少し変わった気がした。
いい旅だった。
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