石の島に咲く「花の御堂」――世界遺産・頭ヶ島天主堂を訪ねて

上五島の旅、午前中最大のハイライトは、やはり頭ヶ島天主堂だった。

頭ヶ島天主堂は、2001年に国の重要文化財に指定され、さらに2018年には「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産「頭ヶ島の集落」として世界文化遺産に登録された、上五島を代表する教会である。

天主堂へ向かう前に、まず案内されたのは堂ヶ島の集落だった。

ここは禁教期、外海地方の潜伏キリシタンたちが移り住み、共同体を守りながら密かに信仰を継承してきた場所である。もともとは、仏教徒の開拓指導者のもと、伝染病患者の療養地として利用されていた島だったという。厳しい時代の中で、彼らはこの離島に活路を見いだし、自らの信仰を組織的に守り続けた。

この地域では、海岸に露出する砂岩質の「五島石」が採石できる。加工しやすく耐久性にも優れたこの石は、建物の壁や石垣、石畳、墓石、さらには鳥居にまで使われ、集落全体に独特の石文化の景観を生み出していた。見ていると、島の歴史が石の表情から伝わってくるようだった。

そして、いよいよ頭ヶ島天主堂へ。

この天主堂は、禁教解除後にカトリックへ復帰した信徒たちが、自ら地元の石を切り出して築き上げた教会である。信徒たちは、一日に二、三個ずつ石を運び積み上げたという。資金不足による中断もあり、完成までには約10年もの歳月を要した。

重厚な石積みの外観は圧倒的だが、堂内に入ると、その印象は一変する。花模様の装飾が施された美しい内部空間は、「花の御堂」と呼ばれるにふさわしく、静かな祈りの空気に満ちていた。


設計を手がけたのは、上五島出身の教会建築家・鉄川與助。もっとも、建築後にいくつか不具合が見つかり、途中でかなり設計変更が加えられたらしい。ガイドさんの説明を聞きながら、「どこが変更されたのだろう」と探しつつ教会の周囲を巡るのも興味深かった。

……とはいえ、この日、私には「どうしても行きたい場所」がまだ残っていた。

昼食後は上五島でも一番北にある江袋教会まで案内してくれた。説明熱心なドライバーさんの話は止まらない。気がつけば、その場所へ向かう時間がどんどん迫ってくる。

ついに私が「あのーー……」と切り出すと、ドライバーさんは一言。

「忘れてた!」

次の瞬間、車は40キロの道のりを一気に駆け抜けていった。

教会内部等一部の写真はパンフレットより引用

――つづく。

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