今しか行けない場所へ――五島列島旅の始まり

昨日のテレビ番組で、高齢者の「推し活」が話題になっていた。
これまで後回しにしていた旅先へ、思い切って出かける人が増えているという。
そう言えば、今回の五島列島の旅も、私にとってそんな場所だった。
飛行機や船を使う旅は、つい億劫になる。
「いつか行こう」と思いながら、気がつけば長い間、先延ばしにしていた。
けれど近頃は、体力の衰えをふと意識する瞬間が増えた。
だからこそ、「行けるうちに行っておこう」と思ったのである。
伊丹発7時5分の便で長崎へ、さらに乗り継いで福江島へ。
朝日がびわ湖の向こうからゆっくり昇り始めるころ、家を出た。

最初に向かったのは、堂崎天主堂キリシタン資料館。
田んぼの緑の中を走り抜け、静かな入り江に近づくと、赤レンガの教会が海辺にひっそりと姿を現した。

堂崎天主堂は、禁教令が解かれた後、五島で最初に建てられた教会だという。
今は資料館として、キリシタン弾圧の歴史を伝えている。
数年前、遠藤周作『沈黙』の舞台となった外海の教会群を訪ねたことがある。
その記憶もあり、五島の教会にはどこか重苦しい歴史の影を想像していた。
けれど目の前に広がっていたのは、青い空と穏やかな海、そして静かな波音だった。
展示された古い写真やロザリオだけが、遠い時代の苦しみを静かに語っている。

波の音を聞きながら、しばらく海を眺めていた。
悲しい歴史を抱えながらも、この場所には不思議な安らぎが流れていた。
五島列島を旅した、最初の日の記録である。
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