心ほどけるお弁当

半年ぶりに、山代温泉の「茶寮なか尾」さんを訪ねた。
帰る時には後ろ髪をひかれ、早々に再訪を誓うのに、不思議となかなか伺えない。
私にとっては、片思いのような場所である。
なか尾さんは、どんどん有名になり、満席が続いているようだ。
私が伺った時も満席で、待合にはたくさんのお客様がお待ちだった。

案内されたのは、初めてのテーブル席。
大きなガラス戸に面していて、苔の庭が見える。
つくばいには、時々雀がやって来る。
テーブル席の賑わいは目に入らず、庭の緑を眺めていると、目も心も休まる。
テーブルに運ばれる最初の料理には、いつも驚かされる。
今日は大きなココナツの殻に氷が積まれ、その中に細いグラスが埋め込まれていた。
グラスには桃の果汁とジュレ。

食前酒ではないけれど、食事の前から期待感が高まる。
続くお弁当は、里芋の葉の上に小さな料理が彩りよく盛り込まれていた。

今日のお造りはカツオ。
小さく刻まれたツマとポン酢が、カツオをおいしく食べさせるよう工夫されている。

実は私はカツオが少々苦手で、家ではほとんど食べない。
それが、こういう場所では不思議と好物に変わる。
カリッと揚がった天麩羅に、味噌汁、ごはん、香の物。
工夫された料理、美しい器。
そして今日は、しっとりとした苔の庭。
山代温泉の端に、心ほどけるお弁当がある。
それはそれは、嬉しい場所である。
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