墓友が京都へ

オープンガーデンで日本各地の個人庭を訪ね歩くようになって、もう二十年以上になる。
一時のガーデンブームは落ち着いたけれど、その分、今の方がゆっくり庭を楽しめるようになった。
毎年訪ねる庭の成長を見るのも楽しいし、庭主さんとはすっかり旧知の間柄になった。
先日、その花友さんのお一人から連絡を頂いた。
尾道旅行の途中、京都で途中下車するという。
静岡の花友さんである。
彼女とは花友でもあるけれど、これからは墓友になる間柄でもある。
数年前、私たち夫婦が樹木葬の出来る場所を探していた時に出会ったのが、東福寺塔頭・正覚庵の法洲苑だった。
静かな佇まいと考え方に惹かれ、ここを終の棲家に決めた。
その話を聞いた彼女も、静岡で樹木葬を探していたが決めかねていたらしい。
そこで京都まで足を延ばし、正覚庵をご案内した。
一目で気に入られたようだった。
「あなたの近所なら安心だから」
そう言って、同じ墓苑を選ばれたのである。
今回の京都立ち寄りの目的は、石碑に彫刻された自分の名前を見ることだった。
法洲苑では、生前に名前を彫刻すると朱色で刻まれる。
それを確認しに来られたのである。
私たちは死後、ご近所さんになる。
正覚庵では春の供養祭が行われる。
全国から集まった人たちが供養をし、その後は宴会まで開かれる。
死後のご近所付き合いを、生前から始めておきましょうという発想である。
お墓に対する考え方も随分変わった。
先祖代々のお墓を守ることも大切な考え方だと思う。
けれど、新しくお墓を持つならどうするか。
私たち夫婦は墓石を残さない道を選んだ。
静かな土の下で眠りたい。
そんな思いから法洲苑を選んだのである。
もう五年以上前のことになる。
それでも、ここを選んで良かったという気持ちは今も変わらない
振り返れば、新婚時代にマンションを探していた時と少し似ていた。
最後の落ち着き先を探していたのである。
だから場所が決まった時は、不思議な安堵感があった。
静岡の花友さんも、朱色に刻まれた名前をご覧になって、ほっとされたようだった。
生きている間は、
庭を見せ合い、花を語り、旅行を楽しみ、そして最後は墓友になる。
花友から墓友へ。
これからも、長いお付き合いになりそうである。
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