ジャックと豆の木の夏

アザミにこれ以上花を咲かせてしまうと、我が家だけではなく、ご近所にも種を飛ばしてしまう。
それは困る。
「ジャックと豆の木のようだ。」
そう笑って楽しんだ夏だったけれど、とうとう切ることにした。
お手伝いしますよ、と声を掛けて下さる方もあった。
けれど、アザミは家人が切ると言った。
猛暑が戻るのは明日から。
今日は湿度は高いものの、日差しはない。
切るなら今日しかない。
午後になると、家人は意を決したように庭へ向かった。
私は、庭へ出られなかった。
アザミに、別れを言いたくなかったのである。
けれど、最後を見ないまま終わるのも、アザミに申し訳ないような気がした。
重い腰を上げて庭へ出ると、アザミはもう大きなごみ袋二つに納まっていた。

あっけなかった。
あれほど空へ向かって伸び、庭の主のような顔をしていたのに。
終わる時は、こんなにも静かなものなのか。
春先、「これはアザミだろうか。」
そんな小さな疑問から始まった今年の庭。
蝶が集まり、棘に驚き、花の咲き方を覚え、「史上最悪の雑草」と知って家族会議まで開いた。
振り返れば、このアザミには随分楽しませてもらった。
「ジャックと豆の木のようだったね。」

そんな思い出だけを残して、今年のアザミの物語は終わった。
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