退院の日

退院時間は午前十時と告げられていた。
しかし我が家はせっかちである。
退院と同時に予定が詰まっていたので、少しでも早く手続きを済ませられないかと前日から相談していた。
その結果、私が病院に着いた九時には、すでに退院手続きは完了していた。
家人はいつも通り、自分で車を運転して帰宅した。
日吉大社を過ぎ、琵琶湖が見え始めた頃だった。
「海外旅行から帰った時みたいだな」
と家人が言った。
早朝便で帰国し、高速道路から見慣れた景色を見る。
そんな旅の終わりを思い出したのだろう。
私も何となく同じ気分になった。
一週間の入院を終えただけなのに、旅行帰りのような気分になるのだから、つくづく単純な夫婦である。
けれど、それだけ体調が戻ったということなのだろう。
今回は理想的な経過をたどって回復してくれた。
帯状疱疹は治療が遅れると神経痛が残り、長く頭痛に悩まされることもあるという。
そうならずに済んだことに、心から安堵した。
帰宅すると、さすがに疲れが出たらしい。
夕方までぐっすり眠っていた。
やはり我が家に勝る場所はない。
一方の私は、家人の帰宅を見届けてから大阪のタンゴコンサートへ向かった。
二人とも楽しみにしていた演奏会だったが、今日は私ひとりである。
それでも、安心して出掛けられることが嬉しかった。

夕食には、退院祝いに頂いたお赤飯をいただいた。
友人たちからは、お見舞いや好物の差し入れも頂いた。
この一週間、沢山の方に心配して頂いた。
家族や友人とのつながりの有難さを、改めて感じた退院の日だった。
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