80歳。いよいよこれから私の人生

80歳。いよいよこれから私の人生 というタイトルを見た瞬間、思わず本を買ってしまった。
著者は 多良久美子 さん。
“80歳”を冠した本は世の中に沢山ある。
けれど、これほど今の自分の気持ちにぴたりと重なるタイトルはなかった。
ほどなく届いた本の帯には、
「やるべき事はもうやった。あとは一日一日を大いに楽しむのみ!」
と書かれていた。
著者の彼女は、想像を超える重荷を背負って生きてきた人だった。
息子さんは最重度の知的障害。
娘さんは早逝。
頼れる子や孫に囲まれた穏やかな老後とは、まるで反対側の人生である。
それでも彼女は、不思議なほど悲観的ではない。
むしろ、
「障害のある息子のお陰で元気でいられる」
とまで書いている。
その強さに驚いた。
彼女自身もまた、長崎の被爆二世だった。
母親は彼女を産んですぐに亡くなり、父親は保証人問題から会社を失った。
決して恵まれた環境で育ったわけではない。
八人兄弟の末っ子として育ったという。
さらに長男は、幼稚園入園直前に麻疹にかかり、あっという間に脳まで侵されてしまった。
本を書いた時点で、その息子さんは55歳の障害者となっていた。
当初は深く落ち込んだそうだ。
けれど転居を機に気持ちを切り替え、その“切り替えよう”という思いが、やがて本物になっていった。
逆風の中を歩き始めたのである。
「この子のために何も出来ない」
そう考え込むのではなく、
“出来る時に、出来ることを”積み重ねていった。
家事をこなし、外でも働き、隙間の時間を見つけては、もともと好きだった針仕事で息抜きをした。
そうして数え切れない役目を果たしながら、80歳を迎えた。
今は、ご主人と息子さんとの穏やかな暮らしになったという。
「今は追い風」と彼女は書く。
そして、
“さあ、これからやりたいことをやる”
と前を向いている。
この力は、簡単に湧いてくるものではない。
これほどの困難があったからこそ、生まれた強さなのだろう。
もちろん、私には彼女ほどの苦労はない。
だから同じようなバイタリティーは簡単には持てない。
それでも、思いはどこかで重なる。
同世代の人から、これほど力をもらえるとは思わなかった。
明日からは、
「しんどい」
「きつい」
を少し封印して、もう少し頑張ってみようと思う。
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