絵の中に還る場所──中札内、美術村散歩記

帯広の朝。
真鍋庭園を後にして、次に向かったのは「六花亭アートヴィレッジ 中札内美術村」である。
美術館やレストランが点在するこの場所は、訪れるたびに新しい感動に出会う不思議な空間だ。

園内に広がるブナの林には、枕木を敷き込んだ小径が続いている。
散歩には堪らなく安らぐ道である。


そして、この美術村に来るもう一つの目的が「レストラン ポロシリ」であった。
コロナ以降は土日のみの営業となり、しばらく立ち寄る機会を失っていた。
今回、金曜日の夜を帯広で過ごしたのも、どうしてもお昼に「ポロシリ」に寄りたかったからに他ならない。

お目当てはもちろん「ポロシリカレー」。
たかがカレー、と思われるかもしれない。
しかし私にとっては、外食で食べるカレーの中で間違いなく日本一だと思っている。
一口ごとに、深いコクが舌の上でほどける。
「これを食べに帯広へ行く」と言っても、決して大げさではない。

もう一つの楽しみは、園内に佇む「真野正美作品館」である。
趣ある茅葺屋根の古民家が作品館となっており、扉を開けるとふわりと時が巻き戻るようだ。


そこには、六花の森で読んだ子どもたちの詩集『サイロ』の表紙を、50周年を機に坂本直行氏から引き継いだ画家・真野正美の原画が掛けられている。
彼の描く風景画には、昭和の匂いがある。
暮らしの断片をやさしく切り取ったその絵の中には、子どもたちの歓声が聞こえ、懐かしい故郷の風が通り抜けていく。
大袈裟かもしれないが、気がつくといつの間にか涙目になっている自分がいる。

時計を見ると、もう1時を過ぎていた。
1時半までには出発しないと、目的地のチミケップ湖には明るいうちに着けない。
後ろ髪を引かれる思いで、中札内の森を後にした。

胸の奥に残ったのは、カレーの香りと、絵の中の子どもたちの笑い声。
またきっと、この道を歩きに来ようと思う。

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