「葬儀場の看板に思う――変わりゆく時代と心のスピード」

午前7時前、久しぶりに青空が広がっていた。寒さも和らぎ、暖かくなりそうな一日の始まりだった。しかし、気温は上がったものの風は冷たく、体感的には寒くもなく暖かくもなく、どっちつかずの一日だった。
そんな朝、我が家から国道に出る前の交差点で信号待ちをしていると、ふと目に留まった看板があった。
実は一昨日も気が付いていたのだが、チラッと見ただけだったので内容を正しく理解できなかった。その場所は葬儀場である。最初は「4月30日までに式場を予約すれば割引価格になる」と思い込んでいた。しかし、葬儀というものはあらかじめ日取りを予約できるものではない。きっと「今のうちに式場の予約をしておけば、何年後でも式場使用料が割引きになる」という意味なのだろうと考えた。
ところが、今日再びその道を通った際に改めてゆっくりと看板を読むと、まったく違う意味だった。実際には「4月30日までにこの葬儀場を利用すれば、式場使用料が割引になる」という内容だったのだ。
葬儀場も競争の時代なのだろうか。この式場は近隣では最も新しいにもかかわらず、あまり利用されていないように見える。この地域では「セレマ」の会員が圧倒的に多い。かつて、セレマしか選択肢がなかった時代に盛んに会員勧誘が行われていたからだ。当時は「家族葬」という概念もなく、勤め先やご近所総出で葬儀を執り行うのが当たり前だった。そのため、多くの人が高額な積み立てをして会員になることが常識とされていた。そして、一度の葬儀で積み立てた金額をすべて使い切るのが規約となっているため、家族葬ではその全額を使い切れないのではないかと感じる。必要額だけ利用し、残額を次回に繰り越すシステムはないのだろうか。
時代の移り変わりはあまりにも早い。葬儀は特に変わった。今は何もかもがシンプル志向になり、それが合理的であることは理解できる。しかし、心のスピードとは異なる速さに、どこか置いて行かれるような感覚がある。
この看板を見て、割引に敏感な私は、まるで葬儀場に急かされているような気持ちになった。しかし、こればかりは計画的に進めるわけにはいかないものである。
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