乱紋 ‐ 永井 路子 

来年(2011年)のNHK大河ドラマ「」は再び、近江が舞台になる。
琵琶湖の畔に暮らしていると、至る所に信長の逸話、秀吉の逸話がある。
坂本には明智光秀の坂本城跡やお墓も有る。
戦国時代以降、都に近い近江が戦場になった事情はよく分かる。
湖上を舟で渡れば北国街道も近いのだから。
都は守られたが、近隣、特に近江は常に戦に荒らされていた時代があった、それだけにドラマの舞台にもなりやすいというものだろう。

永井路子さんは姉母と同世代の方で、歴史上の女性を書かせたら第一人者だろう。
大河ドラマが「江」と決まった時に読んでみようと思ったのは永井さんの「乱紋」だった。
一寸とっつきにくい作家さんと思いきや、優しい書きぶりで人気があるのが良く分かった。
信長の妹、お市の方の遺児の三姉妹としては秀吉の側室になつた「お茶々」が有名だけれど、三女の江が主役になるのは珍しい。

秀吉に言われるままに三度の結婚をした江は関ヶ原ではお茶々と敵対してしまう。
フッと宗家の三姉妹を思い出した。
名家に生まれると時代背景は違えども時代の波に飲み込まれてしまう宿命を感じる。
庶民に生まれた幸せを感じる時である。
永井の本によると、お江は大層口の重い女性だったらしい。
美しさに自信のある茶々は権高に育ち、次女のお初は口八丁の世渡り上手、お江の無口を際立たせる為に姉二人が騒々しく書かれさぞかし迷惑している事だろう。
お江の心の動きは生まれた時から傍に仕えたおちかによって語られている。
お江は父親(浅井長政)の顔も知らず小谷城は落城、10年後にはまた、北の庄が落ちて母親のお市の方をなくしている。
他人の中で暮らしていく術は感情を消すしかなかったのかもしれないけれど、お江の日常を知るとあまりにもさびしい。
千姫が炎上する大阪城から救出された時も「そう」とつぶやくだけの人だったとか。
この本の最後の方に触れられる「ありのままを受け入れながら、その事に全く無関心にあるような、生きる証をできるだけ消したがっているような生き方をしながら、運はどんどん開けてゆく。
お江が望んだわけでもないのに・・・。」
無欲な人生を生きたお江が、新年のドラマではどのように描かれるのかしら。
毎年、本を読んでおくけれど最後まで見続けたドラマはないもので・・。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

skogBLOG内の記事検索

カテゴリー

過去の記事

書評・レビューの情報収集

ブログランキングで書評・レビュー関連の情報を収集できます!
ページ上部へ戻る