銀漢の賦 ‐ 葉室 麟|友情の味は、恋に似て

「蜩の記」を読んだ後、続けての本を読んだ。
「銀漢の賦」を読んだ時、この本は私の中では「蜩の記」以上にインパクトがあった。
読了後、フッと胸が詰まった。
理由は分からなかった。
が、解説を読むと何故胸が詰まったのか思い当った。
この本に流れているものは「友情」だった。
しかも「恋に似て」なのである。

物語は50才を過ぎた主人公の歩んだ道を回想する話で始まる。
10才の頃身分の分け隔てなく遊んだ3人の少年も大人になり世間に責任のある立場になると歩む道がそれぞれに違って来た。
ひとりは百姓一揆の首謀者、一人は取り締まる奉行又ひとりは一揆鎮圧のために出動した鉄砲方だった。
首謀者になった男は刑死した。
刑死させるまでに、二人の心中はそれぞれの立場の葛藤に苦しんだ。
奉行になった男は百姓一揆を鎮圧した事により出世を続けて家老にまで上り詰めた。
友人の男を刑死させた事で心に許せないものを抱え込んだもうひとりの男との間には深い溝が出来た。
そして、その後をどう生きて行ったか。
恋に似た友情は昇華されていったのか。
お薦めしたい1冊である。

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坂本の桜

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コメント

    • 室井
    • 2012年 4月 25日

    葉室麟さんの小説は素晴らしい。
    彼の作風は彼自身の人生を投影しているものかもしれません。福岡の西南学院大学を卒業し地元の小さな新聞社に入社するも暫くして会社は倒産、さまざまな職業を経て53歳で遅咲きの作家デビュー。敗者・弱者からの視点で描く小説はエリートサラリーマンだったら書けなかったでしょう。私は葉室麟さんに大いに興味があります。そして今や注目の作家葉室麟さんに作品で泣かせていただきます。

    • skog
    • 2012年 4月 25日

    室井さん、コメントをありがとうございます。
    実は、去年の直木賞は真山仁さんに期待していたのです。
    それまで葉室さんの本を読んだ事はありませんでした。
    直木賞を取ってから読み始めた新座ものですが、既に5冊を読みました。
    読んでいる間、私の中に流れる感情がいつもより優しくなるような気がしました。
    これからも楽しみです。

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